4台のPOLAROID SX-70を、倉庫から出してきた。
正確に言えば、ずっと大切に保管していた、というような綺麗な話ではない。
傷もある。
革も傷んでいる。
そして、今も動くのかどうか確認していない。
それでも、捨てることはなかった。
この4台を買ったのは、1990年代の終わり頃だったと思う。
アメリカ西海岸を移動しながら、見つけるたびに買った。当時でも安いカメラではなく、一台500ドル近く払った記憶がある。
写真を撮りたかったから集めたわけではない。
この形が好きだった。
POLAROID SX-70は、1972年に登場した。
ポラロイドを創業したエドウィン・ランドが世に送り出した、世界初の折り畳み式一眼レフ・インスタントカメラである。
閉じると薄い箱のようになり、そこから引き起こすと蛇腹が現れ、一眼レフカメラになる。
そしてシャッターを押す。
写真が一枚、その場で出てくる。
今では何でもないように聞こえるけれど、1972年には革命的な出来事だった。
それまでのインスタント写真に必要だった、撮影後にフィルムを剥がす工程さえなくした。撮影した一枚がそのまま排出され、目の前で像になっていく。
その機能ももちろん素晴らしい。
でも僕が惹かれたのは、やはり機能ではなかった。
閉じた姿と、開いた姿。
一つの物体が別の物体に変わるような構造。
工業製品なのに、どこか建築物のようでもある。
僕にとってSX-70は、カメラである前に「美しい物」だった。
1990年代。
インターネットで検索して、世界中の商品を翌日に買える時代ではなかった。
知らない街に行って、店に入り、棚を見る。
なければ次の街へ行く。
だから、物を見つけること自体に時間があった。
この4台も、そうやって僕のところに来た。
どの街でどの一台を買ったのか。
残念ながら、もう正確には覚えていない。
でも、なぜ買ったのかは覚えている。
欲しかったからだ。
役に立つか。
値上がりするか。
資産になるか。
そんなことは考えていなかった。
ただ、この姿を持っていたかった。
今回、この4台を店頭に並べることにした。
レストアもしない。
傷もそのまま。
動作確認も、今のところするつもりはない。
これはカメラ専門店の商品ではないからだ。
ただし、非売品にもしたくない。
僕は昔から、店にある物にはできるだけ値段が付いていてほしいと思っている。
椅子でも、什器でも、照明でも。
それは「何でも売りたい」ということとは少し違う。
物は誰かのところから来て、いつかまた誰かのところへ行く。
その途中に、僕の店があってもいい。
今年、店の一角に少しずつ、
THE ’90s
という場所を作り始めている。
フランク・コジック、NIRVANA、Britpop、MODS。
音楽、服、写真、印刷物。
僕がanalogという店をやりながら、本気で駆け抜けていた時代に、自分の周りにあった物を少しずつ出していく。
90年代を懐かしむためではない。
あの時代は良かった、と言いたいわけでもない。
ただ、
インターネットで答えを探す前に、自分で何かを選んでいた時代があった。
そのことを、物を通して残してみたいと思った。
SX-70は、その最初の4台になる。
状態は良くない。
今も写真が撮れるのかも分からない。
それでも約30年経って、僕にはやっぱりこの姿が美しく見える。
それで十分だと思っている。
4台のSX-70、店頭に並べます。